【SBIHDによるTOB】新生銀行はポインズンピルで対抗
9月11日のブログでも取り上げたSBIホールディングス(SBIHD)が仕掛けるTOBは、対象となる新生銀行が受け入れないことから敵対的TOBになりました。
現状ではこのTOBが成功するかは分かりませんが、市場の反応等が出てきたのでそれを踏まえてJ塾長なりに考察してみます。
今回のSBIHDが仕掛けた新生銀行のへのTOBについては「【敵対的TOB】SBIHDが新生銀行に仕掛けた買収の意味」のブログもご覧ください。
9月16日までの新生銀行の動き
現在までに新生銀行がTOBに関して明かした内容をまとめてみます。
- TOBの実施は伝えられていなかった
- マネックス証券との業務提携の説明はおこなった
- 事業提携についてはSBIHDから提案された公的資金返済スキームが実現不能と判断した
- SBIHD傘下に入ると特定企業色に染まり、事業が阻害されるおそれがある
- SBIHDが公表したTOB提案には他株主の判断に必要な情報が含まれていない
大まかですが9月9日に入ったSBIHDのTOBの報道に対して、9月16日までに新生銀行が指摘した内容はこのようなものです。
なんとなく言い訳のように感じるのは僕だけかなぁ。
まずTOBの実施が伝えられていなかったのは事実かわかりませんが、マネックス証券との業務提携については、SBIHDが納得していなかったことが推測できますね。
SBIHDは新生銀行の筆頭株主なので、丁寧に調整する必要があります。
日本の古い企業は「株主ファースト」を軽く考えており、「経営陣 > 株主」的な力関係と考えているようです。
だからこそ筆頭株主に対して「あなたたちと組むよりマネックスと組んだ方が有益だ」と言える所以かもしれません。
とにかく丁寧な議論ができず喧嘩別れした可能性がありますね。
またSBIHDとの業務提携案が破断した理由は、旧長銀が破綻したときに国から借り入れた借金返済についてSBIHDの案が受け入れられなかったと発表しています。
たしかに中身を見るとSBIHDの提案は無理があるように感じましたが、提案レベルのものを公表する新生銀行もどうかなぁと思いますね。
TOBに対して新生銀行はポインズンピルで対抗
この敵対的TOBに対して新生銀行は、9月17日に開いた取締役会で買収防衛策を実施することを決定しました。
買収防衛って…なんか大事になってきたような?
新生銀行が買収防衛策として実施を決めたのは「ポインズンピル」と呼ばれる手法の一つで、既存の新生銀行の株主に対して新株予約権を無償で割り当てるものです。
今回新生銀行は全株主にたいして新株予約権を割り当て、全体の発行株式数を大幅に増やします。
しかし株主のなかで唯一筆頭株主のSBIHDには、 新株予約権を行使できない条項を付けることで、必然的にSBIHDの株式保有率は低下する訳です。
でもSBIHDだけ 新株予約権を与えないのは不平等じゃないの?
条項に含まれる内容には色々ありますが、現在予想されているのは「短期間に株式を大量に買い集める株主は新株予約権の行使ができない」などの内容が含まれるでしょう。
そうなれば一般株主は株式が無償で貰えますが、SBIHDは行使できず1株当たりの価値が下がるだけです。
でもそれって一般株主にメリットはあるの?
そこです。
新株が発行されても企業の業績は変わらないので、1株の価格が下がるだけで一般株主にメリットはありません。
まぁ言い換えれば株式分割みないたものですかね?
反対にSBIHDのTOBは1株を2,000円で買い取ることから、株式価値を高めており、一般株主に対しても有益でメリットもあります。
(毎日新聞「新生銀行が買収防衛策導入を決定 ポイズンピルでSBIに対抗」)
過去にはポインズンピルでTOBに失敗した企業もある
過去には敵対的TOBがポインズンピルにより失敗した事例があります。
なかでも記憶にあるのは「村上ファンド(旧)」が、東芝機械に仕掛けたTOBです。
このときも話題になりましたが、結局はポイズンピルの導入が臨時株主総会で承認されたことから、村上ファンド側はTOBを断念した経緯があります。
SBIHDは仮処分で対抗
9月17日のロイターの記事には、新生銀行が決議した新株予約権の割り当てについて、SBIHDがそれを差し止める仮処分の申し立てをおこなう可能性を示唆しています。
(ロイター「新生銀の買収防衛策、差し止め仮処分の申し立て検討=SBIHD」)
SBIHDの言い分ではTOBの妨害は既存株主の利益を棄損する行為で、単なる時間稼ぎだと断じています。
またTOBに対する株主の可否はTOBに対する応募状況で判断するべきだとも主張しています。
たしかに今回のTOBは「はげたかファンド」が企業を乗っ取るためのものではなく、企業価値を高めたい思惑があるようにも感じます。
新生銀行がポイズンピルを発動することで、TOBの機会が失われ一般株主の意見が通らなくなることも事実でしょう。
今回のTOBは単なる買収ではないことから、一般株主の判断にゆだねるのも良いかもしれません。
1市場の評価は新生銀行に厳しい意見もある
新生銀行の一般株主はどう思っているの?
新生銀行の株主の多くは、SBIHDのTOBに好意的な意思を持っているように感じます。
もともと破綻した長銀に税金を大量に注入して誕生した新生銀行ですが、未だに税金を返済していません。
えっ そうなの?
政府も国の税金を注入するにあたって、担保として新生銀行の株式を保有していますが、なんと株価が7,500円にならないと税金の回収はできないようです。
また現状では新生銀行も国への返済が終わっておらず、いつになったら返済できるかわからない状況ですね。
SBIHDからのTOBが発表される前の株価は1,400円台で、TOB価格が2,000円ですから、国が税金を保有株式で回収するには株価が4倍程度に上昇する必要があります。
長銀には8兆円の税金が破綻処理で使用され、新生銀行には2,100億円の税金が注入されています。
返済金額は利子を含めて約5,000億円あり、そのなかの2/3程度が未払いの状態と言われています。
先ほども触れたうように新生銀行の株価が7,500円になれば、国が保有する株式を売却することで返済は終了しますが、株価が4倍以上になるには現在の経営では無理があります。
だったらSBIHDとの業務提携は、企業を成長させるチャンスではないのかな?
一般株主の意見を見ていると、同じことが多く書かれていました。
- 破綻した長銀からだらだらした経営を行ってきた
- 新生銀行の中身は旧長銀
- 保守的な経営しかできない
- 昔の経営と同じで株主を軽視している
- SBIHD傘下に入って経営を立て直した方がよい
- 株主利益を阻害するな
- その他
なかなか辛辣な意見が多いのですが、以外にもSBIHDのTOBを歓迎する意見が多いのが特徴です。
それくらいに新生銀行は放漫経営と映っていたのかもしれません。
新生銀行の株価は?
新生銀行の株価は1,400円水準から現在は1,850円~2,000円水準です。
TOB価格が2,000円なので妥当な株価ですが、SBIHDが手を引くと一気に下落する可能性もあるので注意が必要ですね。
このブログの対象である株式投資初心者は、現状では購入しない方が賢明ですね。
これからの動き
これからSBIHDと新生銀行の攻防が激しくなりますが、一般株主はSBIHDに協力的なので、TOBが実施された場合、成功する確率が高いと思います。
- SBIHDから新生銀行へ質問書の回答送付
- 新生銀行の新株予約権の割り当て付与実施
- SBIHDが新株予約券割り当て差し止め仮処分の申し立て
- TOB実施 or 撤退
これからさまざまな動きが予想されますが、J塾長もとくに注意をはらってウォッチしたいと思います。
※このブログの内容はあくまでJ塾長の個人的な感想です。投資は自己判断でおこなってください。