株式投資⑦高配当株で確認したい「経常利益」とは?
昨日は企業が本業でどの程度の利益を上げているかを見る「営業利益」を紹介しました。
財務諸表の損益計算書には営業利益以外にもいくつかの利益項目があり、なかでも「経常利益」は営業利益とともに企業の状態を確認するために重要な項目です。
また経常利益は営業利益と混同しやすいことから、明確に違いを理解していないと投資判断にも悪影響が出てしまうでしょう。
FIRE(ファイア)における不労所得の構築には、投資する企業の業績を正しく理解しなくてはなりません。
本日は利益項目から「経常利益」と営業利益の違いについて紹介しますね。
営業利益の解説については「株式投資⑥高配当株の見つけ方「営業利益」とは?」を参照ください。
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本業以外からの収益は営業外収益
営業利益はあくまで「企業の本業である商取引でどの程度利益をあげたか?」を意味する項目ですが、企業の多くは本業以外でも収益を上げています。
これを「営業外収益」と呼びます。
営業外収益にはおもに以下の収益があります。
- 受取利息
- 受取配当金
- 受取手数料
- 受取家賃
- その他
銀行に資金を預けている企業では利息や利子、株式等を保有している企業では配当金や分配金がもらえます。
またテナント不動産等を所有して貸出していれば、毎月の家賃を受け取れますよね。
このように企業は本業以外からも収益が出ることがあり、それらを売上と区別し「営業外収益」と呼びます。
経常利益は営業利益に営業外収益を加算
経常利益とは営業利益に営業外収益を加算し、営業外費用を差し引いた利益です。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
営業外費用とは本業に関係のない費用であり、「支払利息」、「社債利息」、「株式評価損」、「売上割引」などの費用が該当します。
経常利益は会社の収益の実情がわかる項目で、営業利益でわからない内情を知ることが可能です。
たとえば営業利益が赤字でも経常利益が黒字であれば、本業はイマイチですが保有株式などの資産価値が向上した可能性が予想できます。
また営業利益が黒字で経常利益が赤字の企業は、本業以外の取引で大きな損失が出ていることがわかりますね。
営業利益と経常利益を計算してみよう
電気販売会社のA社は決算目的で損益計算書を作成しています。
A社の営業利益と経常利益を計算してみましょう。
- 売上 : 7,000万円
- 売上原価(仕入) : 2,500万円
- 広告宣伝費 : 600万円
- 販売促進費 : 400万円
- 給与・役員報酬 : 1,800万円
- 地代家賃 : 250万円
- 租税公課 : 300万円
- 受取家賃 : 400万円
- 受取利息 : 50万円
- 受取配当金 : 200万円
- 支払利息 : 150万円
①売上総利益を計算する
売上総利益は売上から仕入れを差し引くことで算出します。
4,500万円(売上総利益) = 7,000万円(売上) ー 2500万円(仕入)
②一般管理費と販売管理費を計算する
一般管理費と販売管理費を計算します。
このなかで該当する項目は広告宣伝費、販売促進費、給与・役員報酬、地代家賃、租税公課の5項目です。
これらの合計は3,350万円です。
③営業利益を計算する
つぎに売上総利益から一般管理費と販売管理費の合計を差し引き、営業利益を計算します。
1,150万円(営業利益) = 4,500万円(売上総利益) ー 3,350万円(一般管理費、販売管理費)
A社の営業利益は1,150万円でした。
④営業外収益を計算して経常利益を計算する
つぎに経常利益を計算するために営業外収益と営業外費用を算出します。
営業外収益にあたる項目は、受取家賃、受取利息、受取配当金で、営業外費用は支払利息です。
計算した営業利益に営業外収益の合計を加算し、営業外費用を差し引いて経常利益を計算します。
1,650万円(経常利益) = 1,150万円(営業利益) + 650万円(営業外収益) ー 150万円(営業外費用)
A社の経常利益は1,650万円で、営業利益より500万円増加しているのがわかります。
つまり本業でも黒字、営業外の部分でも収益を上げていることがわかり、順調な事業内容であることがわかりますね。
高配当株で注目したいポイント
営業利益と経常利益を紹介してきましたが、それを利用して不労所得用の高配当株をどのように見つければよいのでしょうか?
投資の初心者向けにかんたんな目安を紹介します。
営業利益=黒字、経常利益=黒字
本業の事業も好調で、それ営業外の収益も上がっている状況です。
投資対象候補として考えられる企業なので、株価などの指標を確認したり、細かく業績を確認したりして投資の判断に進みます。
営業利益=黒字、経常利益=赤字
本業の業績は好調ですが、本業でない部分で大きな損失を出した可能性があります。
たとえば保有不動産に問題が出た場合や、投資している案件で大きな損失が発生したことが考えられます。
本業は安定していることから、営業外の損害が一過性のものなのかを見極める必要があります。
営業利益=赤字、経常利益=黒字
本業で赤字を出していますが、営業外の収益が好調な状態です。
経常利益は黒字なので投資対象と考えてしまいますが、あくまで本業外の収益により助けられているので投資としては難しい企業です。
ただし一過性の明確な理由があって営業利益が赤字の場合は、投資対象として判断できます。
営業利益=赤字、経常利益=赤字
投資の初心者は特段な理由がない限り投資対象と考えてはなりません。
決算情報の見つけ方
決算情報は各企業のIRページに掲載されていますが、投資の初心者には内容がわかりづらいかもしれません。
そのような場合は、各証券会社のホームページや「みんかぶ(MINKABU)」(運営:株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド)などの投資サイトを利用するとわかりやすく書かれているので便利です。
営業利益と経常利益で会社の実力を知る
営業利益と経常利益を理解するだけで、会社の本当に実力を知ることが可能です。
FIRE(ファイヤ)における不労所得を構築するには、会社の真の実力を把握して的確な投資対象をみつけなくてはなりません。
投資の初心者にとってはなかな難しい作業かもしれない損益計算書の分析ですが、営業利益と経常利益の違いを知るだけでも、企業の実力が見えてくるでしょう。
利益の違いを理解して、適切な企業の評価に挑戦してみましょう。