既発債ってなに?利率2.75%のソフトバンク社債で解説
最近、債券についての話題が少なくなっていましたが、たまたま「既発債」で気になる社債があったので紹介します。
債券と言えば個人向け国債が人気だけど、今日の話題は社債だよね。
何がちがうの?
簡単に説明すると国債は「国にお金を貸す」ことで、社債は「会社にお金を貸す」ことですね。
現在の日本国債は利率が低く、まともな投資とは言えない状況が続いています。
しかし、社内のなかには条件があるものの、比較的利率が高く投資として有効なものもあります。
本日のブログは「既発債」と呼ばれる債券から「第5回ソフトバンクグループ株式会社利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)」を紹介します。
債権についての話題は「楽天は大丈夫か?楽天モバイル債とSUPの改悪からの推察」も見て下さい。
債権の既発債とは?
証券会社等で購入する債券には、「国債」、「一般社債」、「仕組債」などがありますが、さらに「新発債(しんぱつさい)」、「既発債(きはつさい)」の区分もあります。
新発債とは「新規に発行される債券」のことで、既発債とは「既に発行済みで市場で出回っている債券」を指します。
新しく発行する債券は新発債、新規に発行された後の債券は既発債って言うんだね。
新発債は価格等の発行条件が定められたなかで募集されますが、既発債は市場(流通市場)での実勢価格により取引が行われます。
つまり既発債は新発債として発行された債券が、二次流通する際に取引される債券です。
また既発債の価格は新発債と違い、市場価格が反映されることから、購入単価が高くなったり、低くなったりする場合があります。
購入単価とは債券の額面価格のことだよね。
たとえばA社の既発債を例にとってみよう。
購入単価が105%の場合、額面価格100万円の債券を購入するには105万円が必要です。
反対に購入単価が95%の既発債では、購入金額95万円で額面価格100万円の債券を購入できます。
一般的に購入単価は市場金利の影響を受けて、金利が上げると購入単価は低下、金利が低下すると購入単価は上昇すると言われています。
市場金利が債券の金利よりも高くなると、債券の魅力がなくなることから購入単価は下がり、市場金利が下がると債権が有利になることから購入単価が上昇します。
なんとなく目に付いたソフトバンクの既発債
先日、なんとなくSBI証券の債券ラインナップを見ていたら、「第5回ソフトバンクグループ株式会社利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)」が目につきました。
この債券は1年以上前に新発された既発債で、金利が2.75%と高く設定されています。
この債券を例として既発債の見方を紹介します。
(あくまで既発債の解説で使うだけなので、とくにおすすめとかではありません。)
第5回ソフトバンクグループ株式会社利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)
- 利率 : 当初5年固定利率 年2.75%(税引前)
5年後以降 1年国債金利+ 3.10%
20年後以降 1年国債金利+ 3.15%
25年後以降 1年国債金利+ 3.85% - 購入単価 : 100%
- 償還日 : 2056年6月21日
- 実質利回り: 2.75%
- 残存期間 : 約3.9年
- 格付け : BBB(JCR)
- 発行体 : ソフトバンクグループ
この債券の償還日は2056年だから、償還されるまでの期間は「34年間」です。
しかし、残存期間は3.9年に設定されており、償還日と残存期間が一致しません。
なんか変だよ。
この債券はまだ償還まで34年間も残っている長期社債だから、残存期間も34年間じゃないと合わないよ。
そうだよね。
でもこの社債は特約として「期限前償還条項付」がついているから、2026年6月21日以降であれば「期限前償還」が可能です。
また期限前償還は発行体であるソフトバンクグループが勝手に決めることができるよ。
つまり、この社債は2056年までの長期社債ですが、発行体のソフトバンクグループの決定により、2026年6月21日以降は、各利払日を基準として早期償還ができます。
これを「繰上償還可能日」と言うよ。
ここで書かれている残存期間は、1回目の繰上償還可能日(2026年6月21日)までの期間であり、それ以降延長されるかは現在わかりません。
このような長期の社債では、1回目の繰上げ償還可能日で早期償還されることが多く、実際に繰上償還されずに長期の運用がされる例は少ないと思います。
ほぼ1回目で早期償還されるので、J塾長も延長された経験はないですね。
だからこの社債も2026年で早期償還されると思っています。(あくまで予想です。)
残存期間3.9年と考えたら2.75%は魅力かな?
この社債の金利は2.75%で購入単価は100%、新発時から1年少し経過しており、繰上償還可能日が1年短い以外は新発時と条件は変わりません。
利率については初回の繰上償還可能日までは2.75%、それ以降は繰上期間により利率がアップする仕組みで、期間が長くなるほど投資としては有利になります。
期間が25年を過ぎると「1年国債金利+ 3.85%」だから、年利4%にもなるね。
でもまぁ…ソフトバンクも高い利率を払うなら、早期償還して新発社債を出した方が…と考えるだろうね。
だから期間が何十年になる可能性は低いと思うよ。
だけど、気になる話が…
ソフトバンクグループは先日の2023年3月期第1四半期の決算発表で、3兆円を超える赤字を計上しています。
投資会社なので事業赤字ではありませんが、含み益が3兆円減ったことは事実であり、これからの立て直しが注目されます。
もしこのままソフトバンクグループの業績が低迷するとしたら、債券が延長される可能性もあります。
考えようには新発債券よりも好条件かも?
この社債が初回の繰上償還可能日で償還されると仮定すると、残存期間は3.9年、新発時に購入した人は5年だから、1年程度期間が短かくなります。
考えようによっては、既発債の方が期間が短く低リスクかもしれませんね。
しかし、運用期間は1年短いので運用的には損かも…「一長一短」ですかねぇ。
この時勢に2.75%の投資は魅力的なので悪い投資だとは思っていません。
ただし、特約条項が多い社債なので、内容をしっかり調べてから判断しましょう。
今回は既発債の投資を考える上で、たまたまソフトバンクグループの社債がありましたので紹介しました。
ソフトバンクグループの社債は新発されると即完売になることが多く、購入できなかった人もいるかと思います。
既発債も売り切れがあるので現在も販売中かはわかりませんが、興味のある人は検討されてはいかがでしょうか?
J塾長はソフトバンクの社債を既に保有しているので、これ以上は買えません。(笑)
またソフトバンクグループの赤字により、繰上召喚されない可能性も出てきたように感じます。
そこは覚えてくださいね。
※このブログはあくまでJ塾長の感想であり、投資を勧めるものではありません。投資は自己判断と責任でおこなってください。