楽天グループがドル建てジャンク債を発行!驚愕の利回り12%

楽天G外貨建て社債

何かと話題が尽きない「楽天グループ(4755)」が、楽天モバイル債に続いて新発債権を発行することが分かりました。

あ~知っているよ。
「楽天グループ(楽天G)」が発行するのではなく、「楽天カード株式会社(楽天カード)」が発行する「楽天カードマン債」のことだよね。
前にもあったけど、やっぱりネーミングのセンスの無さが注目だよ。

いや、
今日の話題は楽天カードの楽天カードマン債の話ではなく、同時期に楽天Gが発行する「ドル建て社債」のことです。
実は楽天カードマン債の裏で、海外の投資家を対象にとんでもない社債を発行します。

本日の話題は楽天Gが海外投資家を対象に発行する「ドル建て社債」について、この社債が意味する楽天グループの状況を考えます。

 

楽天Gが2022年6月に発行した楽天モバイル債については「楽天モバイル債はジャンク債?年利0.72%で投資判断は?」を見てください。

 

楽天グループが発行するドル建て社債の概要

2022年11月末に楽天Gが「ドル建て社債」の発行を行うことが分かりましたので、まずは社債の概要を紹介します。

 

  • 名称   :  楽天ドル建社債(仮称)
  • 発行日  :  2022年11月30日
  • 期間   :  2年
  • 償還期日 :  2024年11月30日
  • 金利   :  10.25%
  • 利回り  :  12.0%
  • 発行額  :  5億ドル(700億円相当)
  • 格付け  :  BB+(S&P)

 

なに~利率が10.25%利回りは12.0%にもなっているの!
ヤバくない!

この債券はディスカウント債なので、償還時の利回りは年利よりも良くなります。
12%の利回りの社債なんて最近は聞いたことがないので、本当に驚愕でしたよ。
この社債は償還期間が2年と短期ですが、それでも何となく危うさを感じてしまいますね。

日本の国内債券ではありえない利回りですが、楽天Gはなぜこのような高金利の債券を発行しなくてはならないのでしょうか?

 

楽天グループの資金調達能力の低下が明確に

一言で言うと「楽天の資金調達能力の低下」だと思います。

楽天グループは近年、楽天モバイルの設備投資により、業績が低迷しており企業としての信用性が落ちています。

たしかに日本の格付会社「JCR」では、かろうじて「AA」をキープしているけど、世界的な格付会社「S&P」は「BB+」にまで引き下げているよ。

格付にはいくつかの会社がありますが、なかでもS&Pは世界的な格付会社として、最も信頼されている会社です。

S&Pの格付基準では投資適格は「BBB」までとしており、「BB」から下は「投機的(投資不適格)」と扱っています。

つまり、楽天Gの債券はBB+なので、「デフォルトの可能性のある投機的債券」と位置付けられたことから、金利を上げなくては資金調達ができない事態に陥ったと判断できます。

楽天の決算については下の記事を見てくださいね。

 

楽天は3年前の2019年にもドル建て社債を発行しており、その時の格付はたしか「BBB-」で利率は3%程度だったと思います。

確かにアメリカの利上げの問題等はありますが、3年で4倍近く利回りが上がるのは普通ではありません。

会社の格付が低下したことで、楽天Gは資金調達能力が大きく低下していると推測されます。
S&Pはさらに楽天Gの格付を下げる可能性を示唆しているとの報道もあることから、近い将来には資金調達ができなくなる可能性もあるのではないでしょうか?

 

楽天グループドル建て社債はジャンク債

格付がBB以下になると、債券の評価としては「投機的債券」となり、「投資不適格」と判断されます。

楽天Gのドル建て社債はBB+だから、投資不適格な債券だと判断されるの?
それなら誰が買うの?

たしかにBB以下の債券は投資不適格なことから、「ジャンク債」と呼ばれてデフォルトの危険性がある債権の分類に入るよ。
しかし、ジャンク債は金利や利回りが高いことから、あえてそれを狙う投資家も少なくはありません。
投資信託のなかにも「ハイイールド」などの名称がつくものがありますが、これらはジャンク債のなかからデフォルトの可能性の低い債券に投資している商品です。

もちろんBB以下になると年金資金などの公的な資金からの買いは制限されます。

そーかー
年金資金などは安全な運用が必要だから、ジャンク債の購入は控えるんだ。
そしてハイリスク・ハイリターンを目指すファンドなんかがジャンク債を買うんだね。

そう、だからジャンク債だからと言って、資金が集まらないことはないと思うよ。
金利を上げればハイリスクであっても、ハイリターンを目指すファンドはいくらでもあるから。

 

楽天グループの資金調達はジャンク債市場がメインになるのか?

格付がBB以下になった楽天Gは、「ジャンク債マーケット」を利用して資金調達を行います。

今回は楽天の格付がBB以下になって初めてのドル建て社債の発行なので、ジャンク債マーケットでの資金調達も初めてです。

金利が高い理由はジャンク債マーケットでの反応を確かめる目的もありそうですが、ジャンク債と言っても現状ではBB+なので50億ドルの資金調達は問題ないと思います。

しかし、楽天Gは格付けが上がらないかぎり、これからもジャンク債として12%以上の利回りで社債を発行しなくてはならいので、資金調達におけるコストが増えることが懸念されます。

 

楽天グループの資金調達の加速が経営難を表している?

業績悪化

楽天グループはドル建て社債以外にも同時進行で資金調達を計画しています。

 

  • 楽天グループドル建て社債の発行(50億ドル)
  • 楽天カードマン債の発行(500億円)
  • 楽天証券の上場

楽天Gは今年(2022年)6月に「楽天モバイル債」を発行していますが、現在は3つの案件による資金調達を実行しています。

ドル建て社債は50億ドルだから約700億円、楽天カードマン債で500億円だから、これだけで1,200億円だよね。
6月の楽天モバイル債は1,500億円の発行額だったから、今年に入って債券だけで2,700億円の資金調達をやっているよ。
大丈夫かなぁ?

これらの資金の多くは楽天モバイルの設備投資に使用されると想定できるので、これによりさらに本業であるEC事業や好調な金融事業を圧迫させる危険性がありますね。

楽天Gは楽天証券、楽天銀行の上場を計画していますが、上場が成功したとしてもそこで得た利益は楽天モバイルの設備投資に消える可能性が高いでしょう。

 

楽天カードマン債を同時期に発行する理由は?

今回、楽天Gを発行体として「ドル建て社債」を発売しますが、これは主に外国人投資家を対象にした債券です。

しかし、同時期には日本国内で楽天カードを発行体とする「楽天カードマン債」が発売されます。

2020年にも楽天カードマン債の発売はあったけど、なぜ今回はドル建て社債と同じタイミングで発売するの?

ここからはあくまで推測だけど、まず楽天Gの格付がBB+になったことが大きく関係していると思うよ。
実は楽天Gの格付は「BB+」だけど、楽天カードは「A(A-)」です。

つまり、楽天モバイル債はジャンク債ではなく、投資適格社債なので国内でも資金調達がやりやすいと考えているかもしれません。

ジャンク債評価の楽天Gの社債は、日本国内よりもジャンク債マーケットが大きい海外で発売した方が効率的に資金調達ができるのも間違いありませんね。

だから、「ジャンク債マーケットが確立していない日本では格付けが高い楽天カードマン債」、「ジャンク債である楽天G社債はドル建て社債で発行」…と想像しています。

楽天カードマン債の詳細については別記事で紹介します。

 

ソフトバンクとは立場が違う楽天グループは大丈夫か?

年利が高い社債と言えば「ソフトバンクグループ」の無担保社債が人気ですが、前回紹介した通り2022年12月に新発社債を発行します。

ソフトバンクの新発社債も年利が高いから毎回人気だよね。
詳しくは下の記事を見てね!

 

ソフトバンクは毎年高金利の社債を発行しますが、その使い道は「過去に発行した社債の償還」に使用されることが多いようです。

しかし、ソフトバンクグループは投資会社なので、保有する株式や債券の流動資産の総額が安定していれば、借入れは大きな問題にはなりません。

投資における株式や債券は流動資産としていつでも現金化できるので、資産がしっかりしていれば社債による資金調達も問題ではないと思います。

対して楽天Gは設備投資の負債に使用されることから、設備投資をおこなった事業が失敗するととてつもない損失が生まれる可能性があります。

つまり、楽天モバイルです。

 

高い金利は将来の円高を予想した博打

楽天Gが年利10.25%、利回り12.0%で社債を発行できる理由としは、為替も大きく関係していると推測できます。

楽天Gの経営陣は来年以降は円高に向かうと予想しているのではないでしょうか?
ドル建て社債の償還期限は2年なので、2年後に円高に振れていれば償還にかかる費用も少なくなります。

そうなれば経費が掛からない資金になるね。

J塾長も何となく2年後は今よりは円高になっている感じがするけど、2年後の為替なんて誰もわからないから…博打だよ。

 

まとめ

楽天Gがドル建て利回り12%のドル建て社債を発行します。

この資金調達は楽天Gの格付がジャンク債水準に落ちたことが原因だと考えられ、低金利での資金調達が難しくなった状況を表しています。

集まった資金は楽天モバイルの設備投資で使用される予定です。
12%もの高金利集めた資金で利益は確保できるのでしょうか?
注目です。

楽天Gのモバイル事業への執念は非常に強いと思いますが、前回書いたようにドコモ、KDDI、ソフトバンクを超えて「No.1キャリア」になるのは不可能だと思います。

そうなると、ここまでやって調達した資金が無駄になり、二束三文で他社へ売却される恐れさえ感じます。

ついにジャンク債にまで落ちた楽天Gはどこに向かうのでしょうか?

EC事業が好調なだけに「もったいない」と、いつも感じています。

また楽天カードマン債についても楽天カードの格付は「A(A-)」ですが、母体は「BB+」であることを考慮して購入を判断してください。

 

※このブログはあくまでJ塾長の感想であり、投資を勧めるものではありません。投資は自己判断と責任でおこなってください。

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