不動産投資⑭利回りとローン金利で見るイールドギャップ
先日まで不動産投資における表面利回りと実質利回りについて紹介してきました。
今までの説明で不動産投資の利益の目安は、表面利回りではなく実質利回りで計算するとご理解いただけたと思います。
しかし利回りの世界はまだまだ深く、利回りを低下させる要因は経費や税金だけではありません。
本日は金融機関から資金を借りて不動産投資をおこなう場合に注意したい「イールドギャップ」を紹介します。
表面利回りと実質利回りについては「不動産投資⑫家賃収入は表面利回りでなく実質利回りを」をご覧ください。
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不動産投資はローンを利用することが多い
FIRE(ファイヤ)生活を目指して不動産投資をおこなうには、自己資金だけでなく金融機関の「投資専用ローン」を利用することが多いと思います。
不動産投資のメリットの一つは投資ローンが利用できることで、自己資金が少なくても融資を利用することで大きな物件に投資が可能です。😀
少ない自己資金で大きな投資ができることを「レバレッジ効果が大きい」と言い、金融機関からの融資はまさしくレバレッジそのものと思ってよいでしょう。
それでは銀行から6500万円の融資を受けて、一棟アパートを購入したAさんを例に実質利回りとイールドギャップを説明します。
- 一棟アパート 7000万円(8部屋)
- 自己資金 500万円
- 投資ローン 6500万円(25年返済:金利2.5%)
- 年間推定家賃 525万円
- 年間ローン返済 348万円
- 表面利回り 7.5%
このような条件で投資不動産を購入したAさんは、購入直後から持ち出しが多くなりこれからの投資に不安を覚えています。
その理由を考えてみます。
投資ローンの毎月の返済額
Aさんはアパートを購入するために、金融機関から6,500万円の融資を受けました。
不動産投資の初心者であるAさんは、金融機関との取引実績もないことから、金利の優遇はなく年利2.5%で契約しました。
無事にアパートを所有したAさんでしたが、毎月のローン返済も翌月から始まります。
Aさんが毎月金融機関へ支払う返済額は約29万円です。
投資ローンの返済は毎月29万円を25年間返済するもので、年間の返済額は348万円程度、これなら家賃収入で十分返済できるとAさんは考えていました。
参考不動産投資ローン:
- SMBC信託銀行:不動産投資ローン
- SBIエステートファイナンス:不動産投資ローン
- みずほ銀行:アパートローン
実質年利は4.5%
Aさんは年間家賃525万円があれば、年間348万円の返済をおこなってもキャッシュフローは残ると考えており、管理費や修繕費などは残りの177万円で賄うつもりでした。
しかしここでAさんは大きな過ちを犯しています。
つまり年間525万円の収入はあくまで表面利回りで計算されたものであり、実際の運用を表す実質利回りではありません。
投資を始めて以来キャッシュがの残らないことから、あわててAさんは不動産投資に詳しいファイナンシャルプランナーへ相談し、現在の実質利回りを計算することに。
計算した結果、Aさんのアパートの実質利回りは‥「4.5%で実質の収入は315万円程度」です。
「え~これしかないのぉwww」😫
びっくりしたAさんでしたが、これが現実です。
そしてファイナンシャルプランナーから出た言葉は
「イールドギャップが危険水準ですね…ヤバイ状態です…」🤔
そして
「このままなら25年間ずっと赤字ですよ」🤔
そう…
Aさんは年315万円の利益からローン返済として348万円を返済しており、実質的に33万円(毎月2.7万円)の持ち出し(赤字)状態でした。
イールドギャップとは?
「イールド」とは「利回り」、「ギャップ」とは「差(相違)」を差す言葉で、「イールドギャップ」とは「利回りとローン金利の差」を示します。
不動産投資業界では「表面利回り」と「投資ローン金利」の差を指すことが多く、上の物件では「5%(7.5%-2.5%)」がイールドギャップです。
【イールドギャップ】 = 【表面利回り】 ー 【ローン金利】
Aさんも投資不動産を検討するさいに不動産業者の営業マンから
「この物件、イールドギャップも大きく5%以上ありますからお得ですよ!」😽
などとセールスされた記憶が残っていました。
しかし、説明したとおり、このようなケースはあくまで表面利回りで計算されており、闇を含んだ数字です。
イールドギャップは実質利回りで計算
イールドギャップは投資ローンの金利が、実際の不動産投資の利益に与える影響を算出します。
つまり物件価格と家賃のみで判断する表面利回りは意味なく、実質利回りで計算することで本当の影響を知ることできます。
先ほどのAさんのケースでは、ファイナンシャルプランナーが計算した実質利回りは4.5%です。
そうなると実質利回りで計算したイールドギャップは「2.0%(4.5%-2.5%)」しかありません。
イールドギャップが2.0%なら突発的な空室や修繕費が発生しただけで、赤字になり持ち出しで支払わなくてはなりません。
Aさんのケースではアパートを引き継いでから2部屋の退去があり、そのなかの1部屋が埋らないことが、キャッシュフローが悪化した直接的な原因でした。
業者の説明では5%でしたが、現実は2%…
Aさんが契約前に実質利回りでイールドギャップを計算していれば、このアパートに投資しなかった可能性は高かったでしょう。
イールドギャップは3%が最低ライン
イールドギャップはどの程度必要なのでしょうか?
J塾長の個人的な目安として紹介します。
あくまで投資物件の属性にもよりますが、新築、築浅物件でも最低3.0%以上が必要だと思います。(できれば4%以上)
また物件価格の安い築古物件では入居率や家賃価格、修繕などのリスクがあるので、最低でも8%は確保したいところです。
J塾長の考えでは3.0%未満であれば株式投資や投資信託、債券などの投資でも十分達成できる数値なので、不動産投資にこだわる必要はないと考えます。
わざわざ大変な思いして不動産投資を行う必要がみえません。
もちろん人気エリアの不動産を安く購入できれば、売却によるキャピタルゲインは望めますが、現在ではそのような美味しい物件は少なく、不動産投資の猛者が群がっています。(不動産投資の初心者は参入が難しい)
Aさんのアパートは満室での想定家賃収入が年間525万でしたが、実質利回りで計算すると315万円です。
ローンの支払いが年間348万円もあるので、この時点で赤字となりこの投資は 終了 しています。😱
Aさんの対策としては実質利回りを上げるために入居率を上げることはもちろん、家賃の下落を防ぎ付加価値をつけることで収入を上げる方策をおこなう必要があります。
また金融機関と話し合い、返済期間を25年から30年超に組み替えることができればキャッシュフローが改善します。
しかし、どのやり方でもいばらの道は間違いありません。
不動産投資投資の判断は正確な実質利回りから
先日まで表面利回りと実質利回りを紹介してきましたが、実質利回りを算出したら、次はイールドギャップを計算することで不動産投資の収益性が確認できます。
投資は全て事前にリスクを計算することが大切です。
立地エリア、家賃、築年数、間取り、ターゲット、競合などさまざまな要素が不動産投資にはありますが、ローンを利用する場合は借入金利も考慮しなくてはなりません。
イールドギャップは投資の収益性をはかる目安ですが、それだけを見るのではなく、さまざま要素の一つとして総合的な判断をすることが大切です。