高利回りの仕組債は債券とデリバティブを合わせたリスク商品

お金を持ってオッケーサイン

一般的に債券は償還日まで保有することで元本割れのない安全な投資商品だと考えられています。

たしかに「個人向け国債」などは、元本割れもなく1年後には自由に換金もできる安全な債券です。

しかし先日も紹介したとおり、債券にはさまざまな種類があり、元本を保証していない債権もあります。

本日は債券のなかでも高利回りで人気の高い「仕組債」について紹介します。

債券の種類については「債券の種類とは?不労所得に適した債券の見つけ方」をご覧ください。

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仕組債はデリバティブを組み込んだ債券

「仕組債」とは株式などの「デリバティブ(金融派生商品)」を債券に組み込んだ社債のこと。

一般的な債券は満期クーポン(利子)が固定されており、償還期限まで保有することで予定どおりの運用ができます。

しかし仕組債は、マーケットの動向により、利子や償還期限が変動し場合により元本割れすることもある債券です。

つまり仕組債は他の債券よりも利回りが高い代わりに、利子や元本、償還期限についての補償がない債券です。

仕組債のメリット

仕組債のメリットはなんといっても利回りの高さです。

たとえばこの記事を書いている段階で、SBI証券の「円貨建債券 新発債券」をみると、以下の2つの債券が販売されています。

  • 早期償還条項付 他社株式株価連動 円建債券(ファーストリテイリング)
  • 複数株式参照型 早期償還条項付 他社株式株価連動 デジタルクーポン円建債券(資生堂/アドバンテスト)

(参考:SBI証券)

この仕組債の利率はなんと5.7%と13.25%と表示されており、期間は1年~1年半と短期間に設定されています。

このような高利回りの金融商品は現在の日本ではほぼありません。

リスクを理解して投資するならとても魅力的な投資対象だと思います。

仕組債を分解してみよう

債券名:円建他社株式株価連動デジタルクーポン(ノックイン型、早期償還条項)A株式会社

発行元:J塾長銀行

利率:年10.0%

各利率決定日の対象株式終値が利率決定価格以上で年10.0%

各利率決定日の対象株式終値が利率決定価格以下で年0.1%

期間:2年

対象株式:A株式会社

利率判定価格:当初価格×85%

早期償還:期限前償還判定日の対象株式の終値が早期判定価格以上の場合、額面金額で償還

早期償還判定価格:当初価格×105%

ノックイン価格:当初価格×70%

ノックイン事由:償還日までに対象株式の終値がノックイン価格以下になった場合

満期償還:ノックイン事由が発生しなかった場合は額面価格で償還

ノックイン事由が発生した場合は「①最終価格が行使価格以上なら100%額面価格」

「②最終価格が行使価格未満なら額面価格×(最終価格÷行使価格)で償還」

行使価格:当初価格

当初価格:債券発行日におけるA株式会社の終値

このような仕組債があったと仮定します。

この仕組債は「J塾長銀行」が発行しており、「A株式会社」の株式を連動させた仕組債であることがわかります。

この仕組債の償還期限は2年間で、利回りは10.0%と魅力的な高水準に設定されています。

しかしよく見てみるといくつかの条項が付けられているのことに気が付くはずです。

さっそくなかみを見てみましょう。😉

利回り

利回りは10.0%と高利回りですが、10.0%以外に0.1%の利回りも記載されています。

これはA株式会社の株価が別途設定された利率判定日に、当初価格から85%以下に下落していない場合には10.0%の利子、85%を超えて下落した場合は0.1%の利子が適用されるからです。

つまりA株式会社の株価が15%以上下落した局面では、0.1%の利回りにしかなりません。😰

早期償還

早期償還とは償還日を繰り上げて償還されることで、この仕組債のケースでは2年を待たずに元本が償還されてしまいます。

早期償還の判定は定められた早期償還判定日(おもに利息支払日)に、A株式会社の株価が当初価格よりも5%以上値上がりした場合です。

早期償還判定日に株価が105%以上になっていると、償還期限が残っていても元本は額面価格で償還されます。

つまり償還期限まで利子をもらって運用する予定が、たった5%の値上がりで中断され、満期までの運用ができません。

ノックイン事由

ノックイン」とはあらかじめ設定している「ノックイン価格(株価)」より、A株式会社の株価が下回った場合を示します。

この債券の場合はA株式会社の株価が70%以下になるとノックインと判定されます。

ノックインによる満期償還

満期までの期間で一度でもノックインが発生しなかった場合は、償還日に額面の100%が償還されます。

またノックインが期間中に発生していても、A株式会社の満期時点の終値が行使価格以上であれば額面の100%が償還されます。

行使価格とはA株式会社の株価の当初価格ですから、仕組債の発行時点の株価と考えてください。

ノックインが発生し、さらに株価が行使価格未満である場合は、元本が100%償還されず「額面価格×(最終価格÷行使価格)」で償還されます。

たとえばA株式会社の仕組債を100万円保有している場合、最終価格が1,000円、行使価格が1,500円なら償還されるのは、なんと66万6666円です。(100万円×(1,000円÷1,500円) 😱こわーこわーこわーこわー

仕組債は複雑だから初心者は手を出さない

なんとなく仕組債の雰囲気を感じてもらえたらよいのですが、このように仕組債は複雑さまざまな条件が付加されている債券です。

今回の例で組み入れられているのはA株式会社だけでしたが、なかには複数の株式を組み入れたり、株価指数を組み入れたりする仕組債も数多くあります。

また石油や金などの資源を組み入れる仕組債もあります。

仕組債は複雑でベテラン投資でも内容がわからない商品もあり、そのような債権を購入すると知らない間に大きな損失が出るリスクが生まれます。

Aさんは債券をよく理解せずに大手証券会社から利回りの高い「社債」をすすめられ、200万円購入しました。

はじめは普通の社債と思っていましたが、調べてみるうちにどうも仕組債とわかり驚いたAさんです。

結局、その仕組債はアメリカ企業の株価連動クーポンでしたが、コロナ禍による株価が下落で、利回りが低下するだけでなく損失も出ました。

彼のように投資を全く理解していない投資初心者に仕組債をすすめる証券会社は少なくありません。

利回りが高そうに見えても、仕組みを理解できない債券には、手を出さないようにしましょう。

FIRE(ファイヤ)の不労所得を構築するために、仕組債は大きな利益を与えるかもしれませんが、リスクがあるのも事実です。

仕組債は決して悪い商品ではなく、とくに富裕層には人気の高い金融商品です。

それだからこそ、しっかり勉強した上で購入を検討してください。

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