株主優待制度の新設!その後の株価の行方と利回りの変動

優待券

 FIRE(ファイア)における不労所得でも重要な要素である「株主優待制度」は、日本独自の株主サービスでありアメリカなどではあまりみかけません。

 

なかには優待制度を目当てに株式投資を始めた人も少なくなく、とくにテレビで見かける「桐谷さん」の影響は絶大だったようです。

 

その結果現在では、企業の多くで優待制度を取り入れる取り組みをおこなっており、それが株価に影響する現象まで引き起こしています。

しかし反対にコロナ禍による業績の悪化から、優待制度を廃止したり、見直ししたりする企業も出ています。

 

本日は株式優待の新設よる影響について考えます。

 

株主優待株についてのブログは「ワイズテーブル(2798)上場廃止の猶予期間入りと債務超過」などをご覧ください。

優待制度新設(導入)の影響

 

優待制度の新設は株価を大幅に引き上げる効果を持っています。

 

2021年7月28日に新たに優待制度を導入した「京極運輸商事(9073):株主優待制度導入のお知らせ」の例を見てみましょう。

京極運輸商事 は2021年9月30日を第1回の基準日として株主優待制度を開始し、1単元以上の株主にQUOカードを贈呈すると発表しました。

 

京極運輸商事株主優待

  • 年一回 9/30基準
  • 1単元以上(100株)、1年以上の保有
  • QOUカード一律1,000円贈呈

100株を保有して1年たてば毎年9月基準日の株主に1,000円のQUOカードがもらえるんだね

 

9月30日が基準日だからもらえるのは12月だよ

 

そうだね
QUOカードは現金なみに使える人気の優待です。
とくに株価が安価な企業は、配当と合わせることで大きな利回りが実現しますね。

 

優待新設後の株価の動き

 

京極運輸チャート
(引用:SBI証券:京極運輸商事チャート)

それでは優待制度を新設した 京極運輸商事 の株価の動きを見てみましょう。

京極運輸商事の優待制度発表は7/28夕方で、その日の終値は602円でした。

そして発表翌日の7/29の終値は702円のストップ高、さらに翌日の終値も852円の連続ストップ高になっています。

 

え~QUOカード1,000円で連続ストップ高だって

 

日本人は優待が大好きなので加熱していますね。

 

そして気になる週明けの8/2ですが、なんとすぐには値が寄らず市場がオープンして1時間後に1,422円で値が付きました。

 

えっと、1,000円のQUOカードだけだよね
それだけで株価が2.4倍近くも上がるの?

 

もともと 京極運輸商事は業績も安定しており、コロナ禍においても大きな業績の悪化はありませんでした。
今期も2.1億円の経常利益、1.5億円の純利益を確保しており、前期比と比較して拡大しています。

このように業績に問題のない会社が優待制度を開始すると、投資家に注目されて株価が急上昇することがあります。

ただし、来期予想は若干の業績悪化が予想されていますね。

 

優待制度の中身で株価に違いが

 

それではどの企業であっても優待制度を新設すれば、株価が大幅な上昇をするのでしょうか?

 

どうもそれは間違っているようですね。

 

はやり株主優待の中身が大切で、投資家にとって魅力のない内容では、株価には影響を与えないようです。

 

やはり貰うなら価値の高い商品がいいね

お菓子がいいな

 

優待にはさまざまなものがありますが、とくに人気なのはQUOカード、商品券、食事券、交通券などの現金と同じように利用できるものです。

また最近ではカタログギフトなども人気があります。

 

今回の 京極運輸商事はQUOカードが優待品だったので、多くの投資家が反応したと考えられます。

 

株主優待新設での利回りの変動

 

京極運輸商事の配当は1株当たり8円で、株価600円当時であれば配当利回りが1.33%です。

そこに優待としてQUOカードが100株に1,000円もらえるので、100株あたりの合計利回りは2.99%に上昇します。

  • 優待利回り:1,000円÷60,000円(600円×100株)=1.66%
  • 合計利回り:1.33%+1.66%=2.99%

 

ただし株価が急上昇し1,400円程度なので、配当利回りは0.57%程度に低下し、優待利回りと合計しても1.28%程度にしかなりません。

  • 優待利回り:1,000円÷140,000円(1400円×100株)=0.71%
  • 合計利回り:0.57%+0.71%=1.28%

このように株主優待制度の発表前から株主だった人は、配当利回りが合計で大きく上昇しましたが、株価が上がった状態の現在では、とくに高配当株ではありません

 

市場が過熱してからあわてて購入しても、思ったよりも利回りがよくないことも珍しくないので注意してください。

 

慌てないで配当と優待の利回りを確認するんだね

そうだね、計算すると思ったよりも利回りが低いことがあるので注意が必要です

 

優待新設だけで飛びつかない

 

京極運輸商事と同じ時期に「空港施設(8864)」も株主優待を新設しましたが、こちらは株価に影響を与えていないようです。(引用:空港施設株式会社「株主優待制度に関するお知らせ」)

 

空港施設の優待は、みんな大好きQUOカードじゃなかったの?

やっぱりお菓子だぁ

 

残念、実は系列で営業している宿泊施設の割引券が株式保有枚数に対してもらえる優待が新設されました。

7/29に発表されたのですが、7/30には若干上昇に転じましたが終値では7/29の終値(588円)より下落しました。(576円)


現在のコロナ禍では宿泊割引券は人気がなく、仕方がない状況ですね。

 

このように優待でもらえる商品によっては、優待制度が新設されても株価に反映されないことがあります。

ここは特に注意して購入を判断したほうがよいでしょう。

 

それでは明日は株主優待を新設した銘柄の注意点について紹介します。

優待株